ニュース FD委員会の活動 2021年度
”reasonable”なシラバスの書き方
タイトル:”reasonable”なシラバスの書き方
日 時:1月25日(火) 15:30-16:30
場 所:Zoomによる開催
講 師:澤田 稔(総合人間科学部 教授/課程センター長)
開 催:総合グローバル学部(共催:上智大学FD委員会)
参 加 者:41名(講師を除く)
概 要:
本講演は、総合グローバル学部FD活動への共催という形式で、全学FDとして実施された。
全体の構成としては、1)講師自身のシラバス作成に関する基本姿勢を明示することから始まり、2)現在の初等中等教育における単元構成と、単元導入部(初回授業)に関する基本的な考え方、3)授業構成案とシラバスづくりに関する事例紹介、4)質疑応答の順で進行した。
1)では、文科省をはじめ、昨今対応が迫られている三つのポリシーとの連関やその厳密化については適度に参照すればよく、それよりも、授業の準備や学生対応の重要性が勝ることが強調された。ただし、「With others, for others」という大学の中心理念や、各学部・学科で合意された重視したい事項などの実現はその限りではなく、そこにこそ注力すべきであることも添えられた。また、講師の考えとして、シラバスに記載された内容が厳密に適用されることが、必ずしも授業の充実につながるわけではないことも提起された。そのため、シラバスには、講義スケジュールが変更される可能性への言及や、これまでの授業で直面した課題を事前に解決する見通し(例:必ず初回講義から出席すること。公的な理由なく初回の授業を欠席した学生の受講は認めない。)を織り込むことが推奨された。
2)では、背景としての能力論、及び能力評価論の変化を導入として、「知識基盤社会・知識社会への移行に伴う変化」が現在の初等中等教育、高等教育の流れを形成していることが紹介された。そこでは、知識の量よりも、その質や活用可能性などが重視され、唯一の安定的正解があるものとして授業をするのではなく、暫定解や納得解という視点を重視することが求められていること、そして、世界的にもDeSeCoで示されているキーコンピテンシーのように、同じような能力論の重要性が取り上げられていることが補足された。こうした現在の流れを受けて講師からは、単元導入部に関する基本的な考え方として、「逆向き設計」論で整理された授業構想を、初回授業にて受講者に対し共有することが提案された。これは、これまでの個別の計画論から授業を設計するのではなく、予め、どこに到達するのかを決めてから、何を学んでいくか、どのように評価するかを決めるという手法で、受講者に対しても最終到達点に至るには何を学ぶべきかという視点を与えられるため、到達目標の具体的イメージの明確化や学習の動機づけにもつなげやすい利点があることが説明された。そして、その後、講師の担当科目「道徳教育の理論と実践」を例に、実際のシラバスや授業構成の仕方が紹介された。
参加者からは、「抽象度が高い講義科目でどのような到達目標を設定すべきか」、「基礎知識が不足する状態でのアクティブ・ラーニングへの疑問(議論が生産的な方向に向かないため、どうしても知識教授型の授業とせざるを得ない)」、「そもそもシラバスを事前に確認しない学生への対応」など、多くの質問が寄せられ、盛況のうちに閉会した。
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