ニュース 各部門の活動 2024年度
日本語 FD講演会「Z世代(Digital Native)に求められる教科書とは?」
- 主 催:
- 言語教育研究センター(日本語カリキュラム)
- 講 師:
- 岡 まゆみ 氏(ミシガン大学日本研究センター研究員/ミドルベリー日本語学校日本語大学院プログラム講師)
- 日 時:
- 2024年11月23日(土)15:00~16:30
- 実施方法:
- 対面(学内)
- 参加者数:
- 65名(うち日本語常勤教員9名)
概要
11月23日(土)に言語教育研究センター主催のFD講演会が開催され、約65名が参加し盛会となりました。今回はアメリカのコロンビア大学やミシガン大学などで長年日本語教育に携わってこられた岡まゆみ先生をお招きして「Z世代(Digital Native)に求められる教科書とは?」という題目で講演していただきました。岡先生は、アメリカでここ10年、生まれた時からネットやスマホに触れているZ世代の学生を教えてこられ、試行錯誤されたご経験を共有してくださいました。講演は、ネットやAIを通して外国語の独学やネイティブとのコミュニケーションが可能であり、ITの翻訳ツールも充実している昨今、もう外国語を学ぶ必要はないのか、言語教師は不要かという問題提起から始まりました。
そして、現在の言語教育はピアラーニングを重視しており、IT時代だからこそ、血の通ったコミュニケーションの機会を与えることができる教室は重要で、協働学習を行うためのファシリテーターとしての教師の役割が求められることを強調されました。また、昨今は独学の教材などもネット上に溢れていますが、独学では初級で止まるか、うまくいっても中級レベルにしかならないという実情があり、回り道をせず4技能をバランスよく伸ばし、基礎がしっかりした正確な言語を身につけるには、やはり良い教科書を手引きとして学ぶのが一番効率がいいとも話されました。それから、教科書のコンセプトとして、教科書が学習者のニーズに合っているか、ゴール設定が明確か、学習者主体の練習が網羅されているか、自然な日本語や文化が扱われているかというような観点はもちろんですが、DEI(Diversity: 多様性、Equity: 平等性、Inclusion: 包括性)の視点が必要だというお話は、アメリカは日本より1歩も2歩も進んでいると感じるところでした。例えば、教科書の登場人物の国籍や人種、LGBT等への配慮など、教科書作成で考慮すべき点が様々あり、このような配慮がなされていないと学生からクレームが出るということでした。
岡先生は、『初級とびらシリーズ』(15年前に出版した『上級へのとびら』は『中級とびら』として現在改訂中)という教科書も開発、出版されていて、Z世代が満足し得る様々な特徴を備えた教科書であることが紹介されました。このシリーズは本冊、ワークブック共、紙媒体と電子書籍も販売されており、ワークブックで効果的に自律学習を促す工夫がなされ、WEBサイトやQRコードで様々な練習にアクセスできたり、音声教材やビデオ教材もオンラインで入手できるようになっているようです。教師に対しても、絵カードやサンプルスケジュールや教案などが示され、また文法解説の動画があり、反転授業として学生が事前にそれを見ておけば、教室ではコミュニケーション練習に多くの時間が割けるようになっています。岡先生のご経験では、選択した教科書により日本語の履修者数が増減するということがあったそうで、学習者が学びやすい、やる気にさせる教科書を使用することが大切だということも話されていました。
講演は、グループワークで話し合いの時間が何度か設けられ、参加者一人一人が教科書のあり方を身をもって考える時間になりました。最後は質疑応答の時間がほとんど取れないほどの充実した内容のお話でしたが、講演終了後も講演者の岡先生への質問やご挨拶をされる方の長い列ができていました。