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FD委員会概要FD委員会委員長あいさつ

 上智大学の学則第3条第3項では、「本学は、教授法や授業運営などの改善や教育活動にかかる知識・技能・能力の獲得又は向上を組織的に支援するためにファカルティ・ディベロップメント活動を実施するものとする。」と定めており、当FD委員会は、このファカルティ・ディベロップメント活動を実施することを任務としています。このことを念頭に最近のFD活動を振り返るとともに、今後の取り組みについて述べさせていただきます。

 2020年度からの3年間は、コロナ禍において、授業運営をどう改善するか、というよりは、授業を行うことそれ自体が挑戦となりました。教室で学生と教員が向き合うことができない環境で授業をすることが如何に大変なのか、今まで当たり前だと思っていたことが如何にありがたいことであったのか、そして、経験したことのない壁を乗り越えるには、お互いが抱える問題を共有しあうFDが如何に大切であるかを身に染みて感じた3年間となりました。

 教職員が相互に情報共有し、Zoomをはじめとした様々な新しいオンラインツールに徐々に慣れてくると、同時双方向型授業では、大人数でも学生からチャット機能で質問が多く出たり、ブレイクアウトルームで学生同士の議論が活性化したり等、意外な発見が数多くありました。また、オンデマンド授業では、受講学生が難解な説明部分を繰り返し聞いて理解を深めることができたり、教員自身も録画した授業を自分で聞いてみると自分の説明のわかりにくさに初めて気が付いたりする等、コロナ後にも活かせる様々な知見が得られました。

 2021年度からは、本学で新たな質保証体制がスタートし、同年度より大学院授業アンケートを、2022年度からは学部開講の科目を対象とした大学授業アンケートを全面リニューアルしました。その後者では、対象科目が以前は全学共通科目のみだったものが、学科専門科目と語学科目を含む基本的に学部の全科目へ大幅に拡大されました。また、「学び」は大学を卒業する時点で終わるのではなく、生涯にわたって「学び」続ける必要があり、人生100年時代をよりよく生き抜くために自律した学修者を育成するという観点から、「この授業を受けて知的に刺激され、さらに深く学びたいという気持ちになったか」「アクティブ・ラーニングの機会があったか」「クリティカル・シンキングが身に付いたか」などの問いを新たに導入し、本学が掲げる基盤教育の実現度合いを見るためのKPI(重要業績評価指標)を測るものへと大きな転換が行われました。

 2023年度となり、もしかしたら、大学へ及ぼすインパクトがコロナよりも大きいかもしれないChatGPT等のいわゆる生成AIが登場し、高等教育のあるべき姿が大きく問われる状況となりました。比較的高度な問いに対する極めて自然な文章の作成、書籍や論文の要約、使用する単語レベルや文全体の雰囲気(学生らしく、アカデミックな表現で等)を指定した翻訳、コンピュータプログラムの作成等、生成AIはこれまでに多くの科目におけるレポート等で受講生に課してきた内容を容易くこなしてしまいます。

 生成AIにレポート作成等を丸投げして、あたかも自分自身で作成したかのように装いながら単位が付与されてしまう、場合によっては生成AIを使用していない学生よりも、生成AIを使用して何も考えなかった学生の方が良い評価を得てしまうようなことは、学生間の公平性、教育の質保証等様々な観点からも何としても防がなければなりません。一方で、これからの時代や社会はAIがあることを前提として動いていくので、それをうまく活用しながら生きていく力を身に着けるべきであるとか、AIは人間の意思決定や思考様式、社会の統治プロセスにまで影響を及ぼすのではないか、とも言われており、大学全体としてはAIを積極活用しながら、AIとの向き合い方を含めて新たな付加価値のある教育を展開する方法を同時に考えいく必要があるでしょう。

 このように先を見通しにくい状況では、大学として考えたことをセミナーやワークショップで一方的に伝達、実行していただけばよいということにはならず、教員同士が互いに有益な情報や失敗談を共有し、改善を継続していくことが益々重要になってくるものと思います。そのような意味からも、これまで以上に教育水準の向上を図り、社会的使命を達成することが強く求められてきます。FD委員会では、よりよいファカルティ・ディベロップメント活動を実施していくべく努力を積み重ねてまいりたいと思いますので、教職員の皆様の一層のご支援、ご協力をどうぞよろしくお願い致します。

2023年6月1日
学務担当副学長 伊呂原 隆